羊水過多と先天性食道閉塞症の関係
妊婦健診で「羊水が多いかもしれません」と言われると、誰でも不安になりますよね。けれども羊水の量には変動があり、すぐに異常を意味するわけではありません。必要以上に怖がらず、正しい知識を持つことで落ち着いて妊娠生活を送ることができます。今日は「羊水過多」と関わりのある先天性食道閉塞症について、わかりやすく解説します。
1. 食道閉塞症(食道閉鎖症)とは?
食道閉塞症とは、赤ちゃんの食道が途中で途切れていたり、気管と異常につながっている先天性の病気です。
胎児はお母さんのおなかの中で羊水を飲み込み、それをまた羊水として排出するというサイクルを行っています。ところが、食道が途中で塞がっていると、羊水を胃や腸へ送ることができず、飲み込む量が減ってしまいます。
結果として、おなかの中の羊水が減らずにたまってしまい、「羊水過多」につながることがあります。
2. 発生頻度はどれくらい?
先天性食道閉塞症の発生頻度は、出生約3,500〜4,500人に1人とされています(欧米・日本の報告より)。
性別では男児にやや多い傾向があるといわれています。
まれな病気ではありますが、妊婦健診の超音波検査で「羊水量が多い」「胃が見えにくい」といった所見がきっかけで疑われることもあります。
3. なぜ羊水が多くなってしまうのか?
通常、胎児は羊水を飲み込んで消化管を通し、尿として排出することで羊水の量が一定に保たれています。
- 正常:羊水を飲む → 胃腸を通る → 尿として排出 → バランスが保たれる
- 食道閉塞症:飲み込んでも胃に届かない → 胃の中に羊水がたまらない → 飲み込む量が減る → 羊水が増える
つまり、「飲む出口」がふさがっているために、羊水を減らす仕組みが働かなくなるのです。
4. 食道閉塞症の原因は?
完全に原因が解明されているわけではありませんが、胎児の食道と気管が作られる時期(妊娠4〜6週頃)に、分化の過程で異常が起こることで発症すると考えられています。
多くは偶発的に起こるもので、遺伝的な要因が一部関わることもあります。
また、他の先天異常を合併することが多いのも特徴です。
- 心疾患
- 腎・泌尿器の異常
- 骨格異常
- ダウン症候群など染色体異常
特に「VACTERL連合」と呼ばれる、複数の奇形の一部として食道閉塞症が見られることもあります。
5. 羊水が多いとどんなことが起こる?
羊水過多(羊水過多症)は、食道閉塞症以外にもさまざまな原因で起こりますが、妊娠の経過に影響を与えることがあります。
- お母さん側の症状:お腹の張り、胃の圧迫による吐き気・胸やけ、呼吸苦、下肢のむくみ
- 妊娠経過のリスク:切迫早産、早産、前期破水、常位胎盤早期剥離のリスク上昇
- 赤ちゃん側のリスク:臍帯脱出や低形成肺(羊水が極端に多い場合)
つまり「羊水過多」は、妊娠を安全に継続する上で注意が必要なサインでもあるのです。
6. 妊婦健診で注意する点
妊婦健診のエコーでは、羊水量や赤ちゃんの胃の映り方を確認しています。
- 胃がいつも映らない(または非常に小さい)
- 羊水が多い
といった所見がある場合、食道閉塞症の可能性を考えて精密検査が行われます。
最終的には出産後に確定診断され、必要に応じて新生児期に手術が行われます。
7. まとめ
- 食道閉塞症(食道閉鎖症)は出生3,500〜4,500人に1人程度の先天性疾患
- 胎児が羊水を飲み込めず、羊水過多の原因となることがある
- 原因は胎生期の発達異常で、多くは偶発的
- 他の先天異常を伴うことも多い
- 妊婦健診で「羊水が多い」「胃が見えにくい」と指摘された場合は注意が必要
8. 鍼灸院としてお伝えしたいこと
羊水過多や先天性の病気は、妊婦さんにとって大きな不安を伴うものです。
鍼灸では直接的に病気を治すことはできませんが、
- 不安や緊張による自律神経の乱れを整える
- 血流を良くし、妊婦さんの体調をサポートする
- 背中やお腹の張り、むくみなど妊娠中の不快症状を和らげる
といったケアを行うことで、安心して妊娠生活を送るお手伝いも鍼灸院の大きな役割だと思っています。
健診で不安に思ったことなどお気軽にご相談ください。
📚 参考文献
- 日本産科婦人科学会「先天性食道閉鎖症」
- Spitz L, Coran AG. Esophageal Atresia: Lessons Learned from the Past and Future Directions. J Pediatr Surg. 2017.
- Shaw-Smith C. Oesophageal atresia, tracheo-oesophageal fistula, and the VACTERL association: review of genetics and epidemiology. J Med Genet. 2006.
- 日本産婦人科医会「羊水過多症について」
