精子のDNA損傷と不妊治療
〜スイムアップ法・ザイモート・日常でできるケア〜
こんにちは。今日は少し専門的なお話ですが、不妊治療にとても関係のある「精子のDNA損傷」についてわかりやすくまとめてみます。
「DNA損傷って聞くと怖いけれど…」「自分にできることはあるのかな?」と不安に思う方も多いテーマです。けれど、実は生活習慣やちょっとした工夫で改善を目指すことができます。
1. 精子のDNA損傷とは?
精子は「赤ちゃんの設計図」であるDNAを運ぶ大切な役割を持っています。ところが、そのDNAに傷(損傷)が多いと、
- 受精しても受精卵が育ちにくい
- 妊娠が成立しても流産につながることがある
と言われています。
DNAが傷つく原因はさまざまですが、たとえば
- 喫煙や飲酒
- 睡眠不足やストレス
- 高温(長時間のサウナ、熱が出る病気、下着の締め付け)
- 精索静脈瘤(陰嚢の血流が滞る病気)
などが挙げられます。
「精子の数は十分あるのに、なかなか妊娠につながらない」場合、DNAの質が関係していることも少なくありません。
2. 精子を選ぶ方法
体外受精や顕微授精では、卵子に受け入れてもらう精子を「どのように選ぶか」も大事になります。
(1) スイムアップ法
試験管の底に精子を入れて、上の培養液に泳がせると、元気に泳ぎ上がってきた精子だけを集める方法です。
- 良い点:シンプルで多くのクリニックで行われている
- 注意点:泳ぐ力があっても、DNAの損傷が少ない精子だけとは限らない
(2) ザイモート(ZyMot)
最近使われはじめた方法で、「マイクロチップ」を使います。狭い通路を通り抜けられるかどうかで、DNAの傷が少なく、形のきれいな精子を自然にふるい分けることができます。
- 良い点:DNAの質が良い精子を選べる可能性が高い
- 注意点:まだ導入していないクリニックもある
「できるだけ赤ちゃんにつながりやすい精子を選びたい」という想いから、スイムアップに加えてザイモートを導入している施設も増えてきています。(先進医療に含まれる。)
3. 男性におすすめのサプリメント
精子のDNA損傷には「酸化ストレス(体のサビのようなもの)」が大きく関わります。そのため、抗酸化作用を持つ栄養素をサプリメントで補うのは有効です。
- ビタミンC:精子のDNAの傷を減らす
- ビタミンE:細胞膜を守る働き
- コエンザイムQ10:精子の運動率や質を改善
- L-カルニチン:精子のエネルギー代謝を助ける
- 亜鉛:精子を作るのに欠かせないミネラル
💡 サプリは「お守り」ではなく、生活習慣と組み合わせることで力を発揮します。
4. 食事でできる精子ケア
サプリに頼るだけでなく、日常の食事からも精子を守る栄養を取り入れましょう。
- 緑黄色野菜(ブロッコリー、ほうれん草):ビタミンCや葉酸
- ナッツ類(アーモンド、くるみ):ビタミンE、亜鉛
- 青魚(イワシ、サバ):オメガ3脂肪酸
- 赤身肉・牡蠣:亜鉛
- ベリー類(ブルーベリー、ラズベリー):ポリフェノール
特に「カラフルな野菜や果物を毎日摂る」ことは、抗酸化力を高めるポイントです。
5. 鍼灸でできること
鍼灸は「血流改善」「自律神経の調整」「ストレスケア」が得意です。これらはすべて酸化ストレスの軽減につながります。
また、不妊治療に伴う精神的な不安や疲れをやわらげるサポートとしても役立ちます。
「自分でコントロールできる部分」と「医療にお任せする部分」を上手に組み合わせていくことが、赤ちゃんへの近道につながります。
まとめ
- 精子のDNA損傷は、不妊の大きな要因になることがある
- 治療の現場では「スイムアップ法」や「ザイモート」で、質の良い精子を選ぶ工夫がされている
- 男性自身も、生活習慣の改善やサプリ・食事でケアできる
- 鍼灸は「血流・自律神経・ストレス」に働きかけてサポートできる
「男性側にできることは少ない」と思われがちですが、実は日常のちょっとした積み重ねが精子の質に直結します。ご夫婦で協力し合いながら、前向きに取り組んでいただければと思います。
📚 参考文献
- Agarwal A, et al. Reprod Biol Endocrinol. 2014;12:87.
- Esteves SC, et al. Transl Androl Urol. 2017;6(Suppl 4):S734-S746.
- Shirota K, et al. Fertil Steril. 2016;105(2):315-322.
- Greco E, et al. Fertil Steril. 2005;83(3):595-600.
- Safarinejad MR. J Urol. 2009;182(1):237-248.
- Lenzi A, et al. Fertil Steril. 2004;81(6):1578-1584.
