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凍結胚へのPGT-Aとは?
一般的にPGT-Aは、
採卵後に新しく得られた胚(新鮮胚)に対して行われることが多い検査です。
ただし、治療の経過や状況によっては、
すでに凍結保存されている胚(凍結胚)に対してPGT-Aを行う
という選択が検討されることもあります。
新鮮胚と凍結胚、PGT-Aの流れの違い
新鮮胚PGT-Aでは、
- 採卵
- 胚盤胞まで培養
- 生検
- 凍結
- 検査結果を確認後、移植
という流れになります。
一方、凍結胚PGT-Aの場合は、
- すでに凍結されている胚を融解
- 生検を行う
- 再び胚を凍結
- 検査結果を確認後、再融解して移植
という流れになります。
そのため、
凍結胚PGT-Aでは「凍結と融解」を2回行うことになります。
| 項目 | 新鮮胚PGT-A | 凍結胚PGT-A |
|---|---|---|
| 対象となる胚 | 採卵後に新しく得られた胚 | すでに凍結保存されている胚 |
| 生検のタイミング | 胚盤胞まで育った直後 | 凍結胚を一度融解してから |
| 凍結・融解の回数 | 凍結1回+融解1回 | 凍結2回+融解2回 |
| 胚への負担 | 比較的少ない | やや増える可能性あり |
| 現在の主流 | ◎ | △(条件付き) |
新鮮胚と凍結胚、PGT-Aの成績はどう違う?
この点については、
研究によって結論が分かれています。
- 「凍結胚PGT-Aでは成績が低下する」とする研究
- 「凍結胚でも成績は変わらない」とする研究
の両方が報告されています。
成績が低下するとした研究
ある研究では、
凍結後に生検を行い、再凍結する方法が、
妊娠率・出生率の低下と関連していたと報告されています。
この研究では、
流産率に差はなく、
妊娠そのものが成立しにくくなっていたことが示されました。
成績に差がないとした研究
一方で、
複数の研究では、
- 妊娠率
- 出生率
- 流産率
いずれにおいても、
新鮮胚PGT-Aと凍結胚PGT-Aの間に有意な差は認められなかった
と報告されています。
これらの研究では、
再凍結・再融解が必ずしも成績に悪影響を及ぼさない可能性
が示唆されています。
なぜ、論文によって結論が異なるのか?
同じテーマでも、
研究によって結論が異なることは珍しくありません。
今回の研究を比較すると、
- 対象となった患者背景
- 胚の数や質
- サンプルサイズの偏り
- 反復不成功・反復流産の割合
- 年齢
- データの解析単位(胚単位・周期単位)
といった違いがあり、
これらが結果に影響した可能性があります。
つまり、
「凍結胚PGT-Aは必ず成績が悪くなる」
とも
「まったく問題がない」
とも、一概には言えないということです。
| 論文 | 比較 | 結果 | 結論 |
|---|---|---|---|
| 論文① Aluko et al. 2021 | 新鮮胚 2,603胚凍結胚 95胚 | 妊娠率・出生率が低下 | 凍結後生検+再凍結は成績低下と関連 |
| 論文② Zhang et al. 2023 | 新鮮胚 97胚凍結胚 117胚 | 妊娠率・出生率・流産率に差なし | 再凍結は成績に悪影響を与えない可能性 |
| 論文③ Theodorou et al. 2022 | 新鮮胚 451周期凍結胚 146周期 | 妊娠率・出生率に差なし | 二重凍結でも成績は変わらない可能性 |
凍結胚PGT-Aを考えるときのポイント
① 原則としては、新鮮胚PGT-Aが望ましい
凍結や融解の回数は、
少ないほうが胚への負担は小さいと考えられます。
そのため、一般論としては
新鮮胚でPGT-Aを行うことが最も望ましい
と考えられています。
② 凍結胚PGT-Aを検討する意味があるケース
一方で、
- 6回以上移植しても妊娠しない
- 流産を繰り返している
- 良好な凍結胚が複数残っている
という状況では、
- 見た目のグレード順に移植を続けるのか
- 凍結胚PGT-Aで選別するのか
を検討する必要が出てくることもあります。
③ 治療全体の流れの中で判断する
凍結胚PGT-Aは、
「PGT-Aをするかどうか」ではなく、
「今の治療の流れの中で、適切なタイミングかどうか」
という視点で考えることがとても大切です。
慎重に考えたいケース
- 移植回数がまだ少ない
- 他の治療で改善が期待できる
- 正常胚が得られる可能性が低く、治療が長期化する恐れがある
- 凍結胚の数が少なく、融解リスクが気になる
有効な選択肢になり得るケース
- すでに複数回移植を行っても結果が出ていない
- 良好な凍結胚が多く残っている
- できるだけ早く妊娠の可能性を高めたい
- 再採卵よりも費用面でメリットがある
最後に
PGT-A、そして凍結胚PGT-Aは、
技術の問題だけで判断できるものではありません。
治療の経過、胚の状況、
そして
患者さん自身が「どのように治療を進めたいか」
という気持ちも、とても大切な要素です。
凍結胚PGT-Aが適しているかどうかは、
治療全体の流れの中で、
主治医とよく相談しながら、
慎重に見極めていくことが大切です。
