不妊治療と黄体ホルモン補充のお話
「この薬、本当に大丈夫かな…?」
「残渣が出てきて心配…」
そんな声を、不妊治療をされている方からよくお聞きします。
黄体ホルモン補充は妊娠を支えるためにとても大切なお薬ですが、いざ自分が使うとなると、疑問や不安もわいてくるものです。
そこで今回は、膣坐薬と飲み薬の違い、よく使われる薬の特徴や注意点をまとめました。
安心して治療に臨んでいただけるように、少しでも参考になれば嬉しいです。
目次
1. 黄体ホルモン(プロゲステロン)の役割
妊娠の成立と継続に欠かせないのが 黄体ホルモン(プロゲステロン) です。
- 子宮内膜をふかふかにして、受精卵が着床しやすい環境を整える
- 妊娠初期に子宮の収縮を抑えて、流産を防ぐ
自然妊娠では排卵後に卵巣の黄体から分泌されますが、体外受精や顕微授精ではその分泌が不安定になりやすく、薬で補充する「黄体補充」 が行われます。
2. 黄体補充の方法は大きく2つ
① 膣坐薬(腟内投与)
代表薬:ルティナス®、ワンクリノン®、ルテウム®、ウトロゲスタン®
- 子宮に直接届きやすい(子宮優先通過効果)
- 肝臓を通らないため効率的
- 妊娠率や流産率の改善に有効性が確認されています
- デメリット:残渣(白いおりもののようなかす)が出る、かゆみや違和感
② 飲み薬(経口投与)
代表薬:デュファストン®(ジドロゲステロン)、ルトラール®(酢酸クロルマジノン)
- 飲むだけで簡単
- ただし肝臓で分解されるため、子宮に届く濃度は腟坐薬より弱い
- 妊娠率・流産率の改善は確認されていますが、膣坐薬の方が安定して効果があるとされます
3. 各薬剤の特徴と安全性
🌿 ルティナス®・ルテウム®・ウトロゲスタン®(腟坐薬)
- 天然型プロゲステロン
- 長年世界中で使われており、先天性異常リスクは自然妊娠と同等
- 妊娠率・出産率の向上に有効
- 妊娠初期を中心に安心して使える薬剤
🌿 ワンクリノン®(腟用ゲル)
- 1日1回で済むため使いやすい
- 有効性は他の腟坐薬と同等
- 局所の違和感やゲルのかすが気になる方もいる
🌿 デュファストン®(飲み薬)
- 天然型に近い合成プロゲステロン
- 妊娠初期にも比較的安全に使われる
- 単独より腟坐薬との併用で使われることが多い
🌿 ルトラール®(飲み薬)
- 合成プロゲステロン
- 注意点:胎児(特に男児)の外性器形成異常リスクが指摘されているため、保険診療では移植日までしか使用できません
- 妊娠判定後は使用されず、腟坐薬や注射剤に切り替えられます
- 以前は広く使われていましたが、現在は安全性の観点から限定的
4. 妊娠率・流産率への影響
- 膣坐薬(ルティナス・ルテウム・ワンクリノンなど)の使用は、黄体補充なしに比べて妊娠率が明らかに向上することが報告されています。
- 流産率も低下し、妊娠継続率を高める効果が確認されています。
- Cochraneレビュー(2015年)でも、黄体補充はARTにおいて必須と結論づけられています。
- 製剤間の明確な優劣はなく、続けやすさ・副作用の有無・費用によって選ばれるのが実際です。
5. 鍼灸院からのメッセージ
黄体ホルモン補充は、妊娠を支えるとても大切なお薬です。
「残渣が気になる」「飲み薬の方が安心」など不安もあると思いますが、どの薬も必要な理由があり、医師が安全性を考慮して処方しています。
鍼灸では血流の改善・自律神経の安定を通じて、ホルモン補充の効果をさらに高められるサポートができます。薬と体のケアを両立しながら、妊娠を安心して目指していきましょう。
参考文献
- 日本生殖医学会編『生殖医療ガイドライン』2021年版
- 日本産科婦人科学会「ARTにおける黄体補充法」解説
- van der Linden M, et al. Luteal phase support for assisted reproduction cycles. Cochrane Database Syst Rev. 2015;(7):CD009154.
- Fatemi HM, et al. Progesterone support in assisted reproductive technology. Fertil Steril. 2007;89(4):671-684.
- ルティナス®、ルテウム®、ワンクリノン®、デュファストン®、ルトラール® 各添付文書
