OHSS予防に鍼灸を(採卵後に卵巣が腫れる方へ)

目次

OHSSとは

採卵をする際に飲み薬や、注射などによって卵の発育を促しますが、その刺激によって卵巣が腫れることがあります。その腫れによって引き起こされる腹水やその他の症状が発生する状態をOHSSと呼びます。

一般に卵巣が5㎝未満の腫れで、腹部の不快感を伴うものは軽度OHSSと呼ばれ、生理が来ると卵巣は元の大きさに戻ります。

卵巣過剰刺激症候群(ovarian hyperstimulation syndrome : OHSS)は卵巣の腫大に伴って卵巣表面の血管の透過性が亢進し、多量の腹水が貯留する合併症です。
血液が濃縮し、血液凝固が亢進し、腎機能の低下、呼吸障害、ときに血栓症などへ進展し危機的な状況になります。
OHSSの定義にもよるが、ARTに伴って1~33%に発生すると報告されている。多量の腹水、尿量の減少、血液濃縮などがみられる重症OHSSは、0.5~0.3%に発症し、時に腎機能障害や血栓症を併発する。
出典:体外受精ガイダンス/荒木重雄.福田貴美子.医学書院.2006.298p

カバサールの服用

現在は卵巣の顕著な腫れに対してカバサールを服用します。OHSSの悪化にはVEGF(血管内皮細胞増殖因子)が関与し、卵巣腫大や腹水を発生させると考えられており、カバサールはVEGFを抑制してくれるためです。このカバサールの登場により、重度のOHSSの発生は稀になりました。しかし、採卵後に腹部の不快感や吐き気、痛みを訴える方はまだまだ多いように感じます。

鍼灸で腹部不快感の緩和を

軽度OHSSを含むとOHSSの発生は1~33%とされ、採卵前やとくに採卵後に腹部の不快感を訴える方は非常に多いと感じています。しかし鍼灸治療を併用することで、鍼灸治療を併用していないときに比べ、腹部の不快感が少ない、またはないとお話してくださる方が多いです。
ご来院時にはおばあちゃんのように腰が曲がってお腹を押さえるように歩いている方も、治療後にはまっすぐに歩けるようになり、不快感の緩和に役立っています。

鍼灸治療に期待すること

  • 炎症を抑える
  • 腎機能の改善を図る
  • 水はけをよくする
  • 腹部不快感の緩和

おわりに

不妊治療に対する医療保険の導入により、比較的若い方の採卵も増えてきました。そんな時にリスクが上がるのがOHSSです。たくさんの卵が取れることは嬉しいことですが、それに伴う不快な症状で、もう採卵はしたくないと訴える声もききます。そんな時、鍼灸との併用で採卵に挑んだり、採卵後に鍼灸院へ行ってみようと思ってくださる方が増えると嬉しいなと感じています。副作用がない、痛くない、癒しの鍼灸治療で不快な症状の緩和のお役に立てれば嬉しいです。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

  • URLをコピーしました!
目次