不妊治療の採卵スケジュールの中で、1つの周期に2回採卵を行う方法(DuoStim法、デュオ刺激法) が選ばれることがあります。
「1回目の採卵のためにトリガー注射をしてLH(黄体化ホルモン)が上がった後、残っている卵胞には悪影響がないの?」と気になる方も多いのではないでしょうか。
目次
1. トリガーとLHの働き
採卵前には、hCG注射やGnRHアゴニストの点鼻薬などを使って「トリガー」と呼ばれる処置を行います。
これは、体内でLHサージを人工的に起こし、卵胞内の卵子を最終成熟させて採卵可能な状態にするためです。
LHは卵子の核成熟を促し、同時に顆粒膜細胞に働いて黄体化を始めさせます。結果として、黄体ホルモン(プロゲステロン)が上昇し、体は「排卵後の状態」へ移行します。
2. 2回目の卵にLHはどう影響する?
プラスの面
- LHの刺激で卵胞発育が進み、2回目の採卵でも成熟卵が得られる場合があります。
- 高齢や卵巣予備能が低い方に有効
卵胞が非同期的に育つことが多いケースでは、DuoStimによって取りこぼしを減らし、卵子数を増やすメリットが期待できます。 - 実際にDuoStim法では、同じ周期で2回採卵し、より多くの卵子を確保できることが報告されています。
マイナスの面
- まだ小さい卵胞に強いLH刺激がかかると、早期に黄体化してしまい、卵胞環境が不安定になる可能性があります。
- その結果、2回目の卵子は「質がやや落ちる」ことが指摘される研究もあります。
- また、トリガー後のホルモン変化によって子宮内膜は黄体期へ移行するため、この周期に新鮮胚移植を行うことは難しく、通常は全胚凍結が前提となります。
高齢では「後から育つ卵胞」が出てくることも
本来は、生理3日目~5日頃に見える小さな卵胞の数から、その周期で採れる卵子数の目安が立ちます。
しかし、年齢が上がると卵胞の発育タイミングがそろわず、誘発の途中で小さな卵胞が後から育ってくることも珍しくありません。
そのため、生理5日目くらいに「このくらいかな」と予測した数より、最終的に多かったり少なかったりすることもよくあります。
こうした「後から育つ卵胞」をどう活かすか――これが2回採卵法のポイントです。
3. 臨床的なまとめ
- 悪影響だけではない
トリガー後のLH上昇は2回目の卵にも作用しますが、必ずしもマイナスになるわけではなく、むしろ「卵子をより多く確保する」目的で有効活用されています。 - 卵子の質には個人差あり
1回目と比べて2回目の卵子の質が劣る可能性はありますが、十分に妊娠に至った報告も多数あります。 - 使い分けが大切
DuoStimは「卵子数を増やしたい方(高齢や卵巣予備能が低い方など)」に有効とされ、施設ごとに採用方針が異なります。
4. まとめ
1回目の採卵のトリガーでLHが高くなると、残っている卵胞もその影響を受けます。
これは「悪影響」だけではなく、DuoStim法として積極的に使われている方法でもあります。
大切なのは、「数を優先するのか」「質を優先するのか」 を主治医とよく相談し、自分に合った方法を選んでいくことです。
参考文献
- Ubaldi F, Vaiarelli A, D’Anna R, Rienzi L. Management of poor responders in IVF: is there anything new? BioMed Research International. 2014;2014:352098.
- Cimadomo D, Vaiarelli A, Colamaria S, et al. Luteal phase ovarian stimulation increases the number of euploid embryos in poor prognosis patients: a retrospective study. Reproductive Biomedicine Online. 2018;36(4):434–441.
- Kuang Y, Chen Q, Hong Q, et al. Double stimulation during the follicular and luteal phases of poor responders in IVF/ICSI programmes (Shanghai protocol). Reproductive Biomedicine Online. 2014;29(6):684–691.
