不妊治療で排卵誘発を行うと、まれに「卵巣過剰刺激症候群(OHSS)」が起こることがあります。
お腹が張ったり、体がむくんだり、重症化すると入院が必要になることもあるため、不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
今日は、「なぜ生理が来るとOHSSが落ち着くのか?」、
そしてピルやカバサール(カベルゴリン)がどのように役立つのかを解説します。
目次
1. OHSSはなぜ起こる?
OHSSは、卵巣にたくさんの卵胞が育ち、そこから分泌される物質が原因で起こります。
特に注目されているのが VEGF(血管内皮増殖因子) です。
VEGFが増えると血管が「水漏れ」しやすくなり、
血液中の水分が腹腔などに移動 → 腹水・卵巣の腫れ・体のむくみ につながります。
2. 生理が来ると腫れが落ち着く理由
「生理が来ると卵巣の腫れが軽くなる」とよく言われます。
その背景にはこんな仕組みがあります。
- 排卵後の卵胞は「黄体」となり、エストロゲンやプロゲステロンを分泌
- 生理が始まると黄体が退縮し、ホルモンが一気に低下
- VEGFの分泌も減少 → 血管の透過性が落ち着く
- 卵胞が新しく刺激されることもないので、卵巣全体が安静に
つまり、「ホルモンのリセット」+「VEGFの減少」によって自然と腫れが改善するのです。
3. ピル(低用量エストロゲン・プロゲスチン製剤)の役割
採卵後にピルを使うことがあります。
- 新たな卵胞の発育を抑える
- ホルモン値を安定させて卵巣を休ませる
- 次の周期のOHSS再燃を予防
ただし、すでに起きている腫れをすぐに消す薬ではないため、
「落ち着かせる」というよりは「これ以上悪化させない」「再発を防ぐ」といった意味合いが強いです。
4. カバサール(カベルゴリン)の効果
OHSS予防としてよく使われるのが カバサール(カベルゴリン) です。
- ドーパミン作動薬で、プロラクチン抑制薬として使われるお薬
- VEGFの働きを抑える作用があり、血管から水分が漏れるのを防ぐ
- 特に重症OHSSの予防に有効とされ、採卵後から数日間内服することがあります
つまり、カバサールは 「腫れの根本原因(VEGFによる血管透過性亢進)」に直接アプローチする薬 です。
ピルが「卵巣を休ませる」サポート役だとすれば、カバサールは「水漏れを抑える直接対策」といえます。
まとめ
- OHSSは卵胞から分泌されるVEGFが原因で血管が水漏れしやすくなり、腹水や卵巣腫大を引き起こす
- 生理が来るとホルモンが低下し、VEGFも減って腫れが改善
- ピルは新しい刺激を防ぎ、卵巣を休ませて再燃予防に役立つ
- カバサールはVEGFそのものを抑えて、重症化を防ぐ強力なサポート薬
不妊治療中はどうしても身体も心も不安定になりやすい時期です。
もし「お腹の張りが強い」「体重が急に増えた」「息苦しい」などの症状があれば、自己判断せずにすぐに医療機関に相談してくださいね。
