最近、鍼灸院に通われている患者さんの中で、AMHが少しずつ上がっている方が複数いらっしゃいます。
40代で、以前はAMHが1を下回っていた方が、半年ごとの検査で少しずつ数値が上がり、現在は1を超えている。
しかもAMHだけではなく、毎周期ある程度の卵胞が見えていたり、以前かなり高かったFSHが落ち着いてきていたりと、卵巣全体の動きにも変化がみられるケースがあります。
もちろん、これを単純に
「鍼灸でAMHが上がった」
と説明するつもりはありません。
ただ、
AMHは本当に年齢とともに下がる一方なのか。
一度下がったAMHが上がることはあるのか。
そして、そもそもAMHは何を反映している数値なのか。
気になって、あらためてAMHについて整理してみました。
卵胞を守るように働くAMHの役割
不妊治療をしていると、よく耳にする「AMH」。
「卵子があとどれくらい残っているかを見る検査」
と説明されることも多いですが、実はAMHは、単に“残っている卵子の数”を表しているだけのホルモンではありません。
AMHには、卵胞が一気に育ち始めないように調整する役割もあると考えられています。
AMHはどこから分泌されるの?
AMH(抗ミュラー管ホルモン)は、主に卵巣の中にある
前胞状卵胞〜小さな胞状卵胞
の顆粒膜細胞から分泌されます。
卵子のもとになる原始卵胞そのものから、たくさんのAMHが出ているわけではありません。
原始卵胞が少しずつ育ち、
原始卵胞
→ 一次卵胞
→ 二次卵胞
→ 前胞状卵胞
→ 小胞状卵胞
と進んでいく中で、AMHを分泌するようになります。
そのためAMHは、
「卵巣に卵子が何個残っているか」を直接数えているのではなく、今育ち始めている小さな卵胞がどれくらいいるかを見る手がかり
と考えるとわかりやすいです。

AMHには「卵胞を使いすぎないようにする」役割も
ここがとても面白いところです。
卵巣の中にはたくさんの原始卵胞がありますが、それらが一度にすべて育ち始めてしまったら、卵胞はあっという間に減ってしまいます。
そこでAMHは、
原始卵胞が次々と発育を始めすぎないように抑える
方向に働くと考えられています。
つまりAMHは、
「今どれくらい小さな卵胞があるかを反映するホルモン」
であると同時に、
「卵胞の発育するペースを調整するホルモン」
でもあるのです。
卵胞が多ければAMHも高くなりやすい
AMHを分泌する前胞状卵胞〜小胞状卵胞が多いほど、血液中のAMHも高くなりやすくなります。
そのため一般的には、
小さな卵胞が多い
→ AMHも高め
小さな卵胞が少ない
→ AMHも低め
という関係がみられます。
ただし、AMHと卵胞数は完全に一致するわけではありません。
年齢やその時の卵巣の状態、測定方法などによっても変動するため、AMHだけを見て卵巣の状態をすべて判断することはできません。
AMHが上がることはある?
年齢とともにAMHは低下していく傾向があります。
そのため、
「一度下がったAMHが上がることなんてあるの?」
と思われるかもしれません。
実際には、AMHは毎回まったく同じ数値になるわけではありません。
AMHを分泌している小さな卵胞の数や状態によって、数値が上下することがあります。
たとえば、
- AMHが以前より高くなった
- エコーで見える小さな卵胞(AFC)も増えている
- FSHも以前より落ち着いている
という場合には、
「卵子そのものが増えた」ではなく、今AMHを分泌している小さな卵胞の集団が以前より安定して見えている
可能性があります。
「AMHが上がった=卵巣が若返った」ではありません
ここはとても大切です。
AMHが上がったからといって、
卵子の数が増えた
卵巣年齢が若返った
妊娠しやすくなった
と単純には言えません。
一方で、
「AMHは年齢とともに下がるものだから、一度下がったら絶対に上がらない」
というわけでもありません。
AMHは、その時々の卵胞の状態を反映するため、ある程度の変動があります。
だからこそ、
AMHだけではなく、AFC、FSH、E2、月経周期、実際の排卵や採卵の反応などを一緒に見ることが大切です。
AMHが上がったからといって、卵子そのものが増えたわけではありませんが、
AMHを分泌する小さな卵胞が以前より多く見えるようになれば、採卵で得られる卵子の数が増えることはあります。

鍼灸でAMHは上がるの?
鍼灸治療をしていると、
「AMHが上がりました」
と患者さんから聞くことがあります。
とても嬉しい変化ではありますが、
鍼灸によってAMHが上がった
と現時点で言い切ることはできません。
ただ、
- AMH
- AFC
- FSH
- 月経周期
- 排卵の状態
などを長く見ていく中で、以前より安定した変化がみられることはあります。
そのとき私は、
「AMHが上がったから良くなった」
と一つの数値だけで判断するのではなく、
卵巣全体の動きがどう変化しているか
を見るようにしています。
AMHは“未来を決める数字”ではありません
AMHはとても大切な検査ですが、
妊娠できる・できないを決める数値ではありません。
AMHが低くても排卵し、妊娠する方はいます。
反対に、AMHが高くても排卵しにくい場合もあります。
数値だけを見るのではなく、
今、卵巣がどのように動いているのか。
その流れを見ていくことが大切です。

